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小児矯正の時期

小児矯正治療について

ポイントとなる年齢は7歳と12歳です


お子様の歯の矯正治療は、「Ⅰ期治療」と「Ⅱ期治療」に分かれます。
先ずは、上あごに4本の前歯(永久歯)が生えてきた時期(7~8歳)です。
もう一つは、永久歯列が完成した時期です。

これら2つの時期の境目は、だいたい11~12歳。
個人差はありますが、その頃に永久歯が生え揃うのです。
その前と後では治療内容が変わってきます。
矯正治療には、早くやっておくべき治療と、あとからでもできる治療があります。
大ざっぱに言うと、Ⅰ期治療では、早くやっておくべき治療、すなわちあごの骨格のコントロールや永久歯が生える場所の確保などを主として行ない、Ⅱ期治療では、あとからでもできる(成人後でもできる)歯や歯列の矯正を行なっていきます。

 

Ⅰ期治療


乳歯だけの時期から、まだ全部永久歯に生え替わっていない11~12歳までの時期に行なう治療です。
この時期には、基本的にはワイヤーなどを使う本格的な歯の矯正は行ないません。
あごの骨のバランス、大きさを整える骨格矯正が治療の中心になります。
永久歯が生え揃ったときに理想的な状態になるよう、土台をしっかり整えておくのです。

Ⅰ期治療を始めるのは、早ければ早いほどいい効果が得られるというわけではありません。
また個人差がありますので、一律に「何歳になったら検査を」とご案内することもできません。
ただ、日本矯正歯科学会では、7歳ぐらいまでに一度検診を受けるように推奨しています。

お子様が7歳になりましたら、歯並びに問題がないようでも、一度かかりつけの歯科医もしくは矯正専門医のチェックを受けるといいでしょう。
乳歯列期では、3歳児検診が有効です。
この時に、歯科医から将来の歯並びについて、何らかの注意やアドバイスがあるかもしれません。

 

Ⅱ期治療


永久歯が生え揃う11~12歳から成人の方に行なう本格的な治療です。
一部もしくはすべての永久歯の位置を、さまざまな装置によって整えていきます。
手術を行なうこともあります。

Ⅰ期治療を行なわなかったお子様が、この時期から矯正を始めることはもちろん可能です。
矯正治療は、成人後、極端に言えば60代になってからでもできるのです。

しかしⅠ期治療で土台を整えておいたお子様は、Ⅱ期治療をよりよい状態から始められます。

 

Ⅰ期治療で行なうこと


Ⅰ期治療の対象は、乳歯のみ、あるいは乳歯と永久歯が混じった「混合歯列」の状態にあるお子様です。
骨格が成長途上にあってまだ柔軟なこの時期のお子様は、あごの形をコントロールしていくことができます。
お子様の状態により、あごの成長を促進したり、逆に抑制したりして、形やバランスを整えていきます。

たとえば、あごの骨格が小さいために、歯並びがデコボコになりそうなお子様には、永久歯がゆとりを持って生えてこられるように骨格のコントロールをするのです。
すると大人になってからの歯並びがよりよいものとなります。

Ⅰ期治療は、永久歯の歯並びのステージを
より高く持ち上げてあげる治療なのです(永久歯への誘導)。

使う装置は、基本的には取り外し式の装置です。
この装置がひとつで済むお子様と、複数必要になるお子様がいます。
複数の場合は、段階を追ってつくり替えていくことになります。

いずれの場合も装置そのものは単純で、扱いも難しくありません。
お子様の症状によっては、極めて稀ですが本格的な装置での対応が必要なケースもあります。

Ⅰ期治療を受けるメリット

■ 永久歯を抜く可能性が低くなります
Ⅱ期治療においては、永久歯を抜かなければならない場合もあります。
しかしⅠ期治療でよりよい土台をつくっておくことにより、永久歯を抜く可能性を低くできます。

■ Ⅱ期治療が、より短期間で済むようになります
永久歯がよりよい土台に生えてきますので、Ⅱ期治療が必要になったとしても、より簡単かつ短期間の治療で済ませることができます。
矯正期間が終わってから起こりがちな「後戻り」の度合いも小さくなります。

■ 虫歯や歯周病のリスクを減らせます
歯列の状態をよくすることは、ブラッシングのしやすさにもつながるため、虫歯や歯周病のリスクが減ります。

■ 正しい噛み合わせが習慣になります
子どもの時期に噛み合わせを正しく整えてあげると、あごや顔のバランスがよくなります。
よく噛めれば胃腸にも負担をかけません(正常への誘導)。

■ コンプレックスの解消
歯並びの問題は、審美面や発音のコンプレックスにつながることがあります。
その原因を、矯正治療で減らしてあげられます。
お父さん、お母さんは、お子様の歯並びの悩みをしっかり聞いてあげてください。

Ⅰ期治療で完結するとは限らない

Ⅰ期治療がスムーズに済んでも、残念ながら「これで安心」というわけにはいきません。
永久歯が生えたときに、もう一度改めてチェックをする必要があるのです。
そのときに大丈夫であれば、治療は晴れて終了となります。
しかしⅡ期治療も必要となるお子様も少なくありません。

なぜなら、実際どのように永久歯が生えてくるのかは、早い段階では誰にも予想できないからです。
ねじれて生えてくる歯や、傾いて生えてくる歯があるかも知れません。
それは言ってみれば「神のみぞ知る」ことです。
Ⅰ期治療だけで将来生えてくる歯並びを完璧にすることは、残念ながらできないのです。
しかし、”ほぼOK”の状態までなら、可能性は高くなります。

また当クリニックでは、基本的にはできるだけ抜歯しない方向で矯正治療を進めますが、永久歯の生えかたによっては、抜歯が必要になるケースがないわけではありません。
以上の理由から、Ⅰ期治療の時期に、お子様の心身や経済面に過剰な負担がかからないようにすることはとても大切です。
のちのちの余力を残すためにも、当クリニックでは長期的な視野に立って治療を進めています。

 

Ⅱ期治療で行なうこと


Ⅱ期治療は、個人差はありますが、永久歯が生え揃う11~12歳から、成人までの方を対象とします。
主にワイヤーなどの固定式歯列矯正装置を使って、歯並びや噛み合わせを整え正常咬合を完成させていきます。

育ち盛りのお子様は、細胞の活性がさかんなので、成人後の矯正治療に比べますと歯を動かしやすい利点があります。
この時期にしっかり歯を理想的な位置に移動させておくと、のちのちとても助かります。

なかには、歯列の一部だけを矯正する「部分矯正」で済むお子様もいます。
その場合は長さの短いワイヤーを使ったり、ワイヤーを使わず、取り外し式の装置を使ったりします。

Ⅱ期の年齢になれば、あらゆる不正咬合の本格的治療を始めることができます。
ただし、成長中であごの骨格が前後や左右に大きくずれているお子様については、骨格の成長が停止するのを待って、根本的改善のための外科矯正を行なうこともあります。

 

Ⅱ期治療で使う矯正装置


歯の矯正装置にはさまざまなものが使われています。
大まかには、取り外しが可能な「可撤式」と、つけたままで使う「固定式」に分かれます。

一番よく使われているのは、固定式の「ワイヤー(針金)」です。ステンレスやニッケルチタン製のものがよく使われ、値段も一番安価です。
ただし金属アレルギーのあるお子様には、別の素材のものを使います。
ワイヤーとブラケットを使って歯の表側に施す矯正が、基本中の基本となります。
これをベースに、患者様の事情やご要望に応じて、次のようなオプションをつけることもあります。

■ リンガル矯正
ワイヤーを、歯の表側でなく、裏側につける矯正です。矯正装置が目立たないようにしたい、まわりに気づかれないように矯正したいという患者様に用います。
リンガル矯正をするときは、患者様に口を大きく開けてもらわなければならないため、ご本人も矯正医も非常に困難を感じ、時間もかかります。治療費も、表側につける場合より高くなります。
矯正期間中に感じる不便も、表側より多くなります。しゃべりにくいし、装置が舌にぶつかりやすいなどのクレームもあります。

■ ハーフリンガル矯正
上下ともリンガル矯正だと、生活面でも経済面でも負担が大きいので、片側だけをリンガルにすることもできます。
例えば、口を開けたときに見えやすい上の歯だけをリンガルにし、下の歯は表にワイヤーをつけます。逆に、口を開けたときに下の歯が見えやすい方には、下の歯だけをリンガルにするなどの方法があります。

■ その他、目立たせないためのオプション
表側につけた金属色のワイヤーを目立たないようにするために、白や歯の色などにコーティングしたワイヤーを使うこともできます。また、ワイヤーに連結して使う「ブラケット」を、金属以外の目立ちにくい素材のもの(人工サファイア、透明プラスチック、セラミックスなど)に変えることもできます。

■ マウスピース
目立たず、しかも取り外しが可能な「マウスピース」を使って矯正することもあります。マウスピースはストレスが少なく、とても便利です。ただしその分、効果がゆるやかで、時間や費用もかかります。何十枚ものマウスピースを、歯の並べ変えに応じて、いくつもの段階を追って取り替えていく治療になりますから、トータルで見れば、ワイヤーよりむしろ強い意志が必要かもしれません。

■ インプラント矯正
歯の移動を確実に行なうために、固定源として、骨に小さなインプラントを打ち込む方法です。インプラントはワイヤーと併用して使います。一般歯科で使うインプラントとは違い、矯正に使うものはサイズが小さく、治療が終わったら取り外します。

 

親御さんが気をつけておくこと、お願いなどはありますか?


矯正歯科医として、すべての親御さんに、次のことをお願いしたいと思います。

 

乳歯にむし歯を作らない

お子様の乳歯の虫歯を、ひどくなるまで放置していると、抜けたり抜かなければならなくなったりすることがあります。
そうなったときに「永久歯が生えてくるからいい」と安易に考えてしまう親御さんがいらっしゃるようです。
しかし乳歯の健康は、永久歯の健康や、歯並びにも影響をおよぼすことは知っていただきたいと思います。

歯並びの面で困るのは、特に奥のほうの歯が早い時期に抜けた場合です。
するとそれより後ろに生えてくる歯が、本来の位置より前に生えてきてしまうのです。
結果、永久歯が並ぶスペースが狭くなり、大人になったときの歯並びがデコボコになってしまいます。

乳歯は決して「抜けてもいい歯」ではありません。
永久歯が生えるための場所をキープしてくれているという大事な意味合いもあるのです。
お子様の虫歯には十分気をつけてあげてください。
チョコレートなどの甘いお菓子はもちろんのこと、乳酸菌飲料やスポーツ飲料などの甘い飲み物も与え過ぎないことです。

 

お子様が虫歯になったら、早めの治療をお願いします

お子様の乳歯がもし虫歯になってしまったら、早めに治療を受けさせてください。
そうすれば抜けたり抜いたりせずに済むことが多いでしょう。

仮に抜けたり抜いたりすることになっても、打つ手はあります。
永久歯が生えるためのスペースを保っておく治療を行なえばいいのです。
これを「保隙(ほげき)」といいます。「保隙」には、入れ歯のようなものを入れておく、歯が本来の位置より前方に生えてこないような装置を入れておくなど、いくつかの種類があります。

 

矯正治療中は、お子様をサポートしてあげてください

矯正装置を入れている間は、虫歯や歯周病にもなりやすいので、お子様が歯のお手入れをきちんとしているかどうかなど、親御さんは日ごろから注意してあげていてください。
まだ小さなお子様ほど、本人にまかせっぱなしにしていてはいけません。
家族みんなでサポートしてあげてください。

 

こんなときは矯正歯科医に相談を


 

「うちの子にも歯の矯正は必要かしら?」
そのように思ったら、お子様のかかりつけの歯科医、または私のような矯正専門医に相談してみるといいでしょう。
今はインターネットでも専門的な情報を集められますが、実際にお子様の歯の状態を見てもらうことはとても大切です。

よく当クリニックにも、電話で「うちの子の歯はこうなっていて・・・・・・」と相談される親御さんがいらっしゃるのですが、お子様の実際の歯を拝見しなければ、半端に何かを申し上げることはできません。

矯正というのは本当にケース・バイ・ケースで、
歯の状態や、最適な治療は、一人ひとりまったく違うのです。

歯科医や矯正専門医は、そのお子様が大人になったときの歯並びまでも想定して、適切なアドバイスをします。
親御さん一人で悩まず、まずは相談してみてください。

 

こんなときは、ぜひ早めに相談に行きましょう


☑ 乳歯が完成したとき(だいたい2、3歳)に、「受け口」となっている

骨格の問題がありそうです。

 

☑ 下の前歯が永久歯に交換したとき(だいたい5、6歳)に、その歯がデコボコになっている

下の前歯は、乳歯から永久歯への生え替わりが一番先に起こる歯です。
その歯がデコボコになっていると、上の前歯もデコボコに生えてくる可能性が高いです。

 

☑ 上の前歯が永久歯に交換したとき(だいたい小学校低学年)に、その歯がデコボコになっている
後ろに続いて生えてくる永久歯もデコボコに生えてくる可能性が高いです。

 

☑ 学校などの歯科検診で、歯並びの問題を指摘された

最近は学校などの歯科検診でも、歯並びの問題を注意して見ることになっています。「歯科に相談を」といったアドバイスを受けたときは、早めに受診してください。

 

 

 

 

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